誰もいない屋内プール、頭上で唸る蛍光灯、そして何もない空間に響く微かな残響。人影はなく、物語もない。本来なら賑わっているはずの場所がそうではないという、あの独特の恐怖感。その感覚がSteam上で一つのサブジャンルを形成し、今やかつてないほどの盛り上がりを見せています。

Dreamcore's suburban void
5月24日までの週、デベロッパーMontraluzが手掛ける一人称視点の探索型リミナルスペースゲームDreamcoreが、新マップDead Mallの追加により再び注目を集めました。このアップデートで、1990年代の郊外型メガモールをモデルにした果てしなく広がるショッピングセンターが追加され、まさに今のカルチャーの潮流に合致した形となりました。
なぜ今、廃墟モールがこれほど不安をかき立てるのか
Dead Mallマップがこれほど反響を呼んだのには理由があります。かつて郊外生活の中心地だった巨大な商業施設は、今やeコマース以前の世界の記念碑のような存在となっています。Dreamcore版のモールを歩くと、作り物ではない独特の哀愁を感じずにはいられません。その空虚さは単なる演出ではなく、背景にある文脈が重くのしかかっているからです。
重要なのは、リミナルスペースがゲームという媒体と相性が良いという点です。ゲームは、その空間に「存在している」という感覚をプレイヤーに抱かせることに長けています。無人のプールの写真も不気味ですが、一人称視点で周囲の環境音を聞きながら、出口のない場所を歩く体験は、それとは全く別の次元のものです。
この「場所の喪失感」こそが、このジャンルの名作を支えるエンジンです。ここでの恐怖は、ジャンプスケアやモンスターによるものではありません。張り詰めた孤独感と、公共の空間が静かに消滅してしまったかのような世界観の組み合わせこそが、その正体なのです。
プールの問題:サブジャンルが飽和する時
現在のSteamには、遊びきれないほどのリミナルスペース系プールゲームが溢れています。2025年にプール探索の実験的なアプローチで注目を集めたPoolsをはじめ、Tainted Pools、Liminal Waters、そして近日発売予定のBackrooms Anomaly: Poolsなどが並びます。どれも同じに見える(実際その通りですが)という方には、レトロなPS1時代のグラフィックを再現したPoolscapeという選択肢もあります。
プール以外にも、Dream Logic、Liminal Shift、Liminal Universe、Anemoiapolisといったタイトルが、それぞれ同様のスクラップブック的なアプローチで、不安を煽る様々な空間を繋ぎ合わせた体験を提供しています。
多くのプレイヤーがタグ検索で最初に見落としがちなのは、作品によってクオリティに大きな差があるという点です。低コストで制作できるという理由だけで、流行に乗っかろうとする低品質なリリースも少なくありません。どれがプレイする価値のある作品かを見極めるには、ある程度の目利きが必要です。
このジャンルが初めての方は、Steamタグで闇雲に検索するのは避けましょう。ノイズが多く、良作を見つけるのが困難です。コミュニティで一貫して推奨されているのは、Dreamcore、Pools、Anemoiapolisの3作です。
なぜDreamcoreが最適な入り口なのか
2025年1月からSteamで配信されているDreamcoreは、リリース以来着実に成長を続けています。その鍵は「範囲」にあります。特定のロケーションに固執するのではなく、リミナルスペースの定番とも言える様々なアーキタイプを網羅しているのです。屋内プールはもちろん、ローポリゴンの郊外の風景、荒涼とした子供の遊び場、そして今回のDead Mallなどです。一部のマップには軽いパズル要素もありますが、基本的には居心地の悪い場所を自分のペースで歩き回ることに主眼が置かれています。
また、動作が非常に安定している点も重要です。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、Unityのアセットを並べただけで環境音を流しただけの作品が多いこのジャンルにおいては、非常に大きな強みです。

Dead Mall's hollow corridors
The Backroomsとの関連性も無視できません。The Backroomsは、4chan発のクリーピーパスタとして最も有名なリミナルスペースの象徴であり、すでに数十ものゲームが作られ、映画化も進行中と言われています。DreamcoreはThe Backroomsのアイコンに過度に依存していないため、ライセンスの模倣品ではなく、独自の作品として成立している点が評価されています。
今週のSteamチャートと静かなるサプライズ
5月12日から19日の週におけるSteam売上トップタイトルは以下の通りです。
Subnautica 2が発売週にForza Horizon 6を抑えて首位に立ったことは、見た目ほど意外ではありません。Forzaは2026年の大半で予約を受け付けていたのに対し、Subnautica 2はそうではなかったため、発売週の爆発力が上回った形です。また、前作のSubnauticaも7位にランクインしており、シリーズへの関心の高さが伺えます。Subnautica: Below Zeroも13位に食い込みました。
LEGO Batman: Legacy of the Dark Knightは週の後半にリリースされたため、来週にはさらに順位を上げる可能性があります。執筆時点では、リアルタイムのグローバルベストセラーで4位につけています。
現在、リアルタイムチャートにおける真の異端児は、4月にリリースされたLibrarian: Tidy Up The Arcane Libraryです。クリエイターSkoottieによるYouTube動画が1日で274,000回再生されたことで、グローバルベストセラー8位まで急上昇しました。タイミングの良い動画一本が、Steamの動向を劇的に変える可能性があることを改めて証明しています。
哀愁漂う「フォークアート」としてのゲームの魅力
世界はこれほど多くのリミナルスペース系ゲームを必要としていない、という意見ももっともです。しかし、Steamでこのジャンルが根強く残っていることは、ある種の真実を物語っています。これらのゲームは、商業的な成功を目的とせず、誰でも参加できるプラットフォームを通じて低コストで制作・配布される「21世紀のフォークアート」として機能しているのです。
PCゲームには常に非商業的な情熱を受け入れる余地があり、リミナルスペース系ジャンルはその重要性を示す好例です。これらのゲームの多くは、Subnautica 2やForza Horizon 6と競おうとしているわけではありません。特定の「感覚」を瓶詰めし、それを共有しようとしているのです。
今週のインディーゲーム界隈でプレイすべき作品の全容については、当サイトのゲームレビューをご覧ください。また、今週の大型タイトルの攻略が必要な場合は、ゲームガイドセクションをブックマークしておくことをおすすめします。
