Hypnoheadが開発し、tinyBuildがパブリッシングを手掛ける『The King Is Watching』が、Steamの注目すべき新作タイトルとして急速に頭角を現しています。15ドルで販売されている本作は、ローグライク、王国建設、都市経営、タワーディフェンスの要素を融合させたゲームです。リリースからわずか数週間で20万本以上のセールスを記録し、2025年7月のSteamにおける最も注目すべきローンチタイトルの1つとしての地位を確立しました。
本作は、2024年3月に開催されたゲームジャム「Ludum Dare」への参加作品としてスタートしました。当時はパズル形式のレベルを備えたデッキビルダーとして構想されており、その原点は現在もItch.ioで無料版として公開されています。最終的なリリース版は、初期のプロトタイプから大幅に変更されており、幾度もの試行錯誤を経て現在の形へと進化を遂げました。

『The King Is Watching』が20万本を突破
イテレーションとリデザイン
開発期間中、セルビアを拠点とする開発チームは、TinyBuild Connectでの初報を経て、2024年5月にエンドレスモードをリリースしました。しかし、初期テストの結果、特に放置系(アイドル)のメカニクスに関心がないプレイヤーにとって、ゲームプレイが単調になりがちであるという課題が浮き彫りになりました。これを受け、チームは元のビジュアルスタイルを維持しつつ、プロジェクトをローグライクゲームとして全面的に作り直す決断を下しました。
大きな課題となったのは、ゲームのトーンとマーケティングで打ち出すイメージの整合性でした。初期バージョンはライトな体験を謳っていましたが、実際のゲームプレイはシリアスな戦略性が求められる内容でした。そこでチームは、ミームにインスパイアされたイベントや「Goose Riders」といったユーモアと不条理な要素を導入することで、ゲームの深みとエンターテインメント性のバランスを整えました。
その結果、「城を管理し、モンスターの侵攻から防衛する」というオリジナルの核となる面白さを維持しつつ、「王が直接監視している時のみ臣下が働く」というユニークなギミックと、ローグライクシステムによる高いリプレイ性を両立させることに成功しました。この組み合わせが、ウィッシュリストの増加を大きく後押ししました。

『The King Is Watching』が20万本を突破
Steam Next Festと初期の成長
2025年2月に開催されたSteam Next Festは、本作にとって大きな転換点となりました。『The King Is Watching』は、2,300以上の参加タイトルの中で、同時接続プレイヤー数(CCU)ベースで15番目に多くプレイされたデモ版となり、最大1,800 CCUを記録しました。これにより、本作はイベント参加タイトルの中で上位1%にランクインしました。フェスティバル期間中、6万件のウィッシュリストを獲得し、1日あたりのアクティブユーザー数は平均11,000人を達成しました。
デモ版を活用した戦略は、成長の鍵となりました。現在までに50万回以上ダウンロードされているデモ版を通じて、初期プレイヤーからのフィードバックを収集し、オンボーディングの改善やユーザーエクスペリエンスの調整、ゲームプレイの明瞭化を図りました。このアプローチが、ローンチに向けたウィッシュリスト増加の強力なエンジンとなりました。

『The King Is Watching』が20万本を突破
高いエンゲージメントとプレイヤーのリテンション
プレイヤーのエンゲージメントに関する統計も注目に値します。リリースから間もないにもかかわらず、中央値でのプレイ時間はすでに11時間を超えており、高いリプレイ性を示しています。戦略的な深みを持つローグライク作品において、このエンゲージメントの高さは、プレイヤーの満足度と長期的なリテンション(継続率)の可能性を示唆しています。
地域別のパフォーマンスと中国市場戦略
本作のセールスにおいて最も顕著な点は、中国市場での好調なパフォーマンスです。総販売数のうち39%が中国からのもので、米国は16%、ドイツは9%でした。10万本以上のセールスを記録した325本のローグライクゲームのデータセットに基づくと、The King Is Watchingは中国の所有シェアにおいてSteamのローグライクゲーム上位30位にランクインしています。
tinyBuildの中国市場での成功は、意図的なものでした。ローカライズは早期から統合されており、Steam Next Festの開催前にはデモ版とストアページが翻訳されていました。パブリッシャーは有料メディア予算の約20%を中国市場に割り当て、現地の代理店と協力してインフルエンサーへのアプローチを行いました。特にインフルエンサーの王老菊氏は、Bilibiliで75万回以上の再生数を記録しました。また、同地域で推奨価格よりも低く設定されたローンチ価格が、口コミによる成長を促進しました。デモ版ダウンロードの約3分の1が中国から発生しており、この戦略の有効性が証明されています。

『The King Is Watching』が20万本を突破
価格設定とパートナーシップ
価格設定は、ゲームのポジショニングにおいて戦略的な役割を果たしました。tinyBuildは『The King Is Watching』を、高価格帯のタイトルに期待されるクオリティを備えた15ユーロのピクセルアート・インディーゲームとして売り出し、期待を上回る価値を提供することを目指しました。
また、Instinct 3、Hooded Horse、The Arcade Crew、Devolver Digitalといったパブリッシャーとのバンドル販売も奏功しました。購入の約20%がこれらのバンドル経由であり、インディーゲームのエコシステムにおける協力的なプロモーションの重要性が浮き彫りとなりました。
総括
『The King Is Watching』は、ゲームジャムから生まれた有望なアイデアが、イテレーション、精密なマーケティング、そしてグローバルな展開を通じて、いかにして商業的に成功するタイトルへと進化できるかを証明しました。開発中のピボット(方向転換)、Steam Next Festの活用、そして中国市場への効果的なアプローチにより、HypnoheadとtinyBuildは本作を2025年を代表するインディーゲームの成功例へと押し上げました。







