「スピンオフ作品の中でも、非常に大きな達成感を感じています。最高の売上を記録するスピンオフゲームを目指して開発に取り組みましたが、発売前は正直なところ、これといった期待はしていませんでした」。そう語るのは、コーエーテクモ代表取締役社長の鯉沼久史氏だ。オメガフォースが開発した『Pokemon Pokopia』は、のんびりとした島暮らしを楽しめるシミュレーションゲームであり、シリーズ30年の歴史の中でも屈指のヒット作へと静かに成長を遂げた。
興味深いのは、「目標としていたこと」と「本心では期待していなかったこと」のギャップだ。鯉沼氏のコメントからは、野心的な社内目標を掲げつつも、最悪の事態を想定していたスタジオの姿が浮かび上がってくる。
野心はあったが、確信はなかった
『真・三國無双』シリーズで知られるオメガフォースは、いわゆる「ほのぼの系」のライフシミュレーションを得意とするスタジオというイメージではない。そのため、社内で期待値が低く抑えられていたのには一定の論理がある。このジャンルは競争が激しく、過去のPokemonスピンオフ作品の評価もまちまちであり、島づくりシミュレーションはコーエーテクモが通常手がけるタイトルとは大きく毛色が異なるからだ。
鯉沼氏の話によれば、転機はスタジオの外から訪れた。「発売直前に海外メディアの多くがプレイして非常に高く評価してくれたことで、そこから火がついたと感じています」と彼は説明する。つまり、発売前から海外のプレスが実質的に導火線に火をつけていたのだ。
これは注目すべきパターンである。本作は大規模なマーケティングキャンペーンや、フランチャイズの知名度だけで売れたわけではない。実際にプレイした人々がその魅力を語り続けたことで、自然と広がっていったのだ。
5週間で400万本を販売
その人気は数字にも表れている。発売から最初の5週間で、『Pokemon Pokopia』は400万本を売り上げた。これは、『Pokemon Stadium』や『Pokemon Pinball』、『ポケモン不思議のダンジョン 赤の救助隊・青の救助隊』、『ポケモン不思議のダンジョン 時の探検隊・闇の探検隊』といった歴代のPokemonスピンオフ作品のトップ5に即座にランクインする数字である。
現在のスピンオフ作品の記録保持者は『ポケモン不思議のダンジョン 赤の救助隊・青の救助隊』の585万本だが、『Pokemon Pokopia』のペースを考えれば、その記録を塗り替えるのも時間の問題だろう。
Switch 2のセールスチャートでは、『Donkey Kong Bananza』に次ぐ順位につけている(バンドル版として発売された『Mario Kart World』を除く)。任天堂は一部地域で『Pokemon Pokopia』のSwitch 2同梱版の発売も発表しており、販売数はさらに伸びる見込みだ。
オメガフォースが作り上げたもの
重要なのは、『Pokemon Pokopia』がどのようなゲームであるかを理解することだ。これはメインラインのRPGや対戦ゲームではない。Pokemonの生息地を作り、管理し、Pokemonと穏やかに触れ合い、明確な勝利条件のない世界でただ過ごすという「ほのぼの系」のシミュレーションだ。『あつまれ どうぶつの森』以降、このジャンルは爆発的に成長しており、『Pokemon Pokopia』はゲーム界で最も認知度の高いIPを纏うことで、その市場に完璧にフィットした。
オメガフォースはアクセシビリティ(遊びやすさ)を徹底的に追求した。カジュアルなプレイを推奨し、ログオフしてもプレイヤーにペナルティを与えず、進行のテンポも緩やかであるため、コアなPokemonファン層を超えた幅広いプレイヤーを惹きつけている。初日から自分好みの環境で遊びたい場合は、『Pokemon Pokopia』のベスト設定ガイドで、テキスト速度からカメラ操作まで詳細を確認できる。
鯉沼氏の誠実さが意味するもの
チームがこれほどの成功を予想していなかったと公言するCEOの姿は、どこか清々しい。ゲーム業界は発売前のハイプ(過剰な宣伝)サイクルで回っており、自社のゲームの成功に驚いたと公言する経営者は稀だ。ファミ通に対する鯉沼氏のコメントは、PRのためのリップサービスではなく、非常に率直なものとして受け取れる。
多くのプレイヤーが見落としがちだが、このような「予想外の成功」は、言葉で聞く以上に珍しいことなのだ。スタジオは常に社内目標を立てるが、それを達成することと、Pokemonの皮を被ったシミュレーションゲームが世界的な話題作になることは、全く別の話である。
一部地域でのSwitch 2同梱版の展開や、今夏後半に予定されているDLCの配信もあり、本作の勢いは止まりそうにない。これからゲームを始めるプレイヤーは、コンテンツが追加される前に『Pokemon Pokopia』で最初に購入すべきおすすめアイテムをチェックしておくのが良いだろう。








